• 鈴ノ音

神界の掟を破った代償~前編~

最終更新: 2018年5月20日

遥か古にあった昔話でございます。

時は平安…神の子と呼ばれる巫女神が山の頂上に社を構え鎮座しておりました。

巫女神の持つ力は、「命を授け、命を削る」というものでした。

毎日たくさんの新しい命が生まれ、そして毎日たくさんの命が黄泉の国へと旅立ちます。

巫女神の所へは、病に苦しみ、福を求め、安らぎを欲する人々が多く手を合わせておりました。しかし、巫女神の居る山の頂上は険しく、年老いた人はもちろん、子供、女性はなかなか登る事が出来ない…そんな険しい男道でした。

巫女神は、毎日、山を見下ろし手を合わせる人々の願いを受け入れ祈りを込め人々へ気づきと平安をもたらしておりました。

直接人と会う事はもちろんの他、神の子でもありますから安易に人々が住む下界へ降りることもさえも許されることはありませんでした。

巫女神は、どんな姿で人々は生活をし、どんな表情でどんな葛藤を抱きながら家族を紡ぎ築いていくのだろう…そんな疑問を抱え日々社の中から思うのでありました。

この社の門番として、そしてまた社の周りに立つ神木達の世話係として毎日一人の青年が朝から日が沈むまで山の頂上で過ごし世話を焼いていたそうです。

巫女神は毎日、すだれから覗く青年の脚を見て、青年の話す声に耳を傾けておりました。巫女神でもあろうお方が透視をすれば全て見据え逢わずとも見えていたはずなのに、巫女神は視ようとは決して思わなかったそうです。

巫女神には、白狐、天狗が常に遣いのものとして側におりました。特に、幼少期いえ巫女神がかつて人間であったその時から一緒の白狐でありましたので大の仲良しでもありました。

巫女神は白狐に問いました。「なぜに、人は苦しみ悩み迷う…それを救う所で彼らは報告にすら参らないではないか。ではなぜにわれはここへ居るのじゃ。」白狐は静かに答えました。「人間は過ちを犯し続けます。それはいつの世も決して変わることなく減ることもないでしょう。しかし、人々が神に手を合わせ祈りを込め、己や家族の為に考え心想う…その心は決して変わることはないのでしょう。…平安の世は人に、気づきと安らぎを満ちたりる程与えました。それでも、彼らは本当の気づきにまだ出会えていないのかもしれません。」

そんな時、門番の青年が日の出とともに山頂へやって参りました。巫女神はそっとすだれの隙間から青年を覗いておりました。





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