これは実際に霊界でお逢いした女性から聞いたお話であります。
まず初めに天狗とは…簡単にご説明致します。
俗に言われる天狗は「妖」の一種として記載されていることが多いようですが…私が実際にお会いした何人かの天狗様はほとんどが神に仕えし使者でございました。天狗様には大きく分けて3種類のタイプが存在するそうです。
1、神界に属した神の使者。2、自然界に属した自然霊。3、低層な憑きモノと呼ばれる妖
今回は、そんな天狗様にまつわるお話でございます。
…その昔、妖と人間は共に共存していた時代があったそうです。
迷いと煩悩に葛藤し続けている人間にとって妖達は、妖気溢れるその姿、そしてどこか物寂しそうな姿が心を惹かれる理由であったのかもしれません。
とある村に一人の気立ての良い女がおりました。
ある日、女は山菜を取りに近くの山へ向かいました。
木々の生い茂る山道を歩いていると女の目の前に、とても美味しそうな山菜が現われました。これを取って帰れば家族はさぞ喜ぶことだろう…女は、山道と崖の狭間に育つ山菜に手を伸ばしました。
ところが不運にも、前日に大雨が降ったせいか山地はぬかるみ足場が悪く、たちまち女は山から崖下へと転げ落ちていきました。
…ふと気が付くと女は木の上に居たのであります。着物の裾でも木に引っかかったのかと女は思い安堵したのでありました。ところが、着物の裾を見ようが足袋を見ようが、どこにもちぎれた跡やほつれた箇所は見当たりませんでした。
女は不思議に思いながらも、これは天より見守る神々の助けだと思ったそうです。
枝をつたり木の下へ降りると、天へ向かって女は手を合わせ助かったことへの感謝をしたそうです。
その時、天より一片の黒い羽根が舞い落ちて来たそうです。
鳥の羽根にしては大きく丈夫で、これまた不思議に思った女でありました。
すると、天から地鳴りを思わせるような太く凛々しい声が聞こえたのでありました。
「我、神に仕えし天狗なり。雨は恵をもたらす貴重な息吹、しかし、人間にとっては時として油断してはいけない恵なり。」と。
女はハッと驚き声の主へ問いました。
「天狗様、あなた様が私をお助けになられたのですか。何と幸せなことでしょう。どうか私にそのお姿を見せては下さいませぬか。」
すると天狗は山を突き抜ける程の大きな突風を起こしたそうです。そして
「神に仕えしモノであれば安易に人間へ姿を見せることは禁じられておる。お前の感謝しかと受けた。さぁ、家へ帰れ。」と言い放ちました。
…その後、女が天狗へ話しかけても返答は一切ありませんでした。
続 く
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