天狗の姿を見て女は悟ったそうです。
天狗のまとう衣は気品あふれ、威厳や凛々しさまでも衣から沸き立って見えたそうです。
「私が天狗様の妻となるにはどうしたらいいのでしょうか。」ふと女は口に出してしまったそうです。天狗は、静かに言い放ちました。
「愚かなことを申すな、天寿全うこれこそが人間の与えられた使命である」と。
もう二度と会えないと分かると女の覚悟は既に決まっていたようです。
…「死んで夫婦となってはくださいませぬか」
春になると小川のせせらぎと共に新しい芽吹きが育ち、心地よい風を運んできます。
自らの死は、与えられた天寿を全うすることなく女の覚悟と共に終わりを告げたのでありました。
女の亡骸を天狗は抱きかかえ、息途絶えた瞬間に生まれた魂と一緒に天へと舞い上がったのでありました。
神界の掟を破った天狗は、神の使者ではなく霊界の番人となり死者の魂を導く役目を新たに担いました。そこで、天狗に仕え寄り添う女性こそが天狗に恋をしたこの女でありました。
…その女性とは霊界の山の中腹で出逢いました。
女性は言いました。帰り道霧の立ち込める霊界で、
「道に迷わずに帰られますか?」と。私が外へ足を踏み入れると、霧が一斉に晴れ私の足元を光が包み込み照らして下さいました。女性は続けて言いました。
「自分の信じた道には、決して後悔をしないこと。私は今とても幸せです。」と。
見送る女性のお顔は、とても凛としたそれは美しいものでありました。
こんな不思議な話を聞けて嬉しい反面、女性の覚悟は神界の掟をも打ち抜くほど強かったのだと思い知らされました。
(天狗の妻となった女の話は、長文の為少し話を省略しています。)
この天狗と天狗の妻となった女性の居る山は、死者が霊界へ行く途中にあります。
私が修業でそこへ訪れた際にも、何人かの死者(魂)はおられましたが他に有名な霊能者の方々もいらっしゃいました。(ご健在の方です)未だにあの建物の概要は分かりませんが、そこに行った際に頂いた書には神々からの言伝が記載されてありました。
亡くなられた方々の道しるべの他に、神々からの言伝を伝える神聖な場所であることに間違いはなさそうです。
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