• 鈴ノ音

天と地に生まれし白狐~後編~

父の亡き後、お子は口を開こうとはしませんでした。

蔵での生活を終わらせ、屋敷の中に戻ったお子は他の者が理解出来ない話をもう二度と話すことは無くなったそうです。

白狐はそんな様子を憐れみ、共に哀しみ寄り添い続けました。


…ある晩、白狐は自分を地へ送り出した神に祈り問うたそうです。

「私が出来ることは何でしょう」「姫に笑顔をお与えください」と。

神は静かに言いました。

「よく尽くしました。時の経つものは早いモノ。お前がお子と一緒に過ごし成長した姿がこんなにもお前を強くしていること嬉しく思います。生涯側に寄り添い、共に過ごしなさい。お前の役目はお子を守り続けること。例えそれが暗黒の世の始まりであったとしても。人間と接し、お前が得た経験や知識、人間の肌の温もりはお子でしか味わえないものであった。今なら共に過ごし続ける意味がお前にもわかるであろう。この度は大儀であった…」


幼い狐が自分でも気づかないうちに、大きく勇ましい姿へとなっていたことを神はおっしゃっていたのでしょう。お子の成長と共に狐自身も成長し、この世を取り巻く全てのサイクルを見抜き理解していたのでしょう。




お子は生涯独身であったそうです。年頃になる頃に、度々縁談の話はあったようですが決して誰とも夫婦とならず一人で花や木を愛で過ごし、天寿全うし亡くなりました。



その最期の瞬間も、共に寄り添い続けた白狐でありました。

…お子が天へ召される時、白狐は光を放ち一人の青年の姿となったそうです。

そして最期、お子は彼に触れ「よく仕えました…ありがとう」とつぶやいたそうです。

青年は一粒の涙を流し言いました。


「…どの世界へ行こうが、どこへ生まれ変わろうが共に生き側にお仕え続けます。あなた様と過ごした時間は決して消えません。またあなた様のお側に。」


これは白狐の昔話です。

成人してまでも「お子」と呼び続けたことには意味があります。また、神の告げた暗黒の世とは一体何を指しているのかもわかりません。

ただ、地に生まれし白い狐が天へと行き、再び地へ戻り人間と過ごしたこの意味と深くつながっているのかもしれません。





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